「カフェ バグ」の店主の最大の関心事は、珈琲豆のローストである。1998年に日本で最初にイタリア製のスーパー焙煎機を導入し、悪戦苦闘、試行錯誤の末に、このマシーンを使いこなすようになった。
今では、「カフェ バグ」は喫茶店ではなく、小さな珈琲豆焙煎工場といった理解が正しいのではないだろうか。
そんなわけだから、珈琲豆の焙煎中には、常連客でも珈琲を飲むことができないのだ。その事情を知らぬお客が断られ「無礼者!!」と気分を害することもある。仕方のないことではあるが、願わくば店のドアに「ただいま焙煎中につき、珈琲はありません」あるいは「本日は場合によって入店をお断りすることもあります」と札を吊るしてほしいと吾輩は思うのだが...。

さてさて話は変わって、この店では時折、LPレコード鑑賞会が開かれる。鑑賞会といっても、別段の準備や告知があるわけではない。珈琲を飲みながら、店主と会話し、会話が弾めば、いつの間にか自然とLPレコード鑑賞会に様変わりしているという次第だ。
一ヶ月前くらいは、確かバッハ鑑賞会であったと記憶しているが、今日は何だか、スラブ的な雰囲気の漂う曲が流れていた。
立て掛けてあるLPジャケットには「ボヘミアン」と読める見慣れぬ文字が書いてある。「ボへミアンといったらプラハ、プラハと言えばスメタナかチャイコフスキー(?!)」くらいの知識しか持たぬ吾輩のこと、音楽的素養のない吾輩は店主の話にただただ相槌を打つ。
頭の中でわけのわからぬ言葉がグルグル回っている内に、レコードもグルグル回って、今度はノルウエーの英雄、グリーグの曲に代わっていた。
グリーグを聴いていると、音楽には風景や色彩があるものだと吾輩は感心するのだ。まるで、眼の前に静謐なノルウエーのフィヨルドの水面や湖面が見えてくるのだ。
そんな鑑賞会で、面白いアイデアに話が咲いた。「尾道はマニアックな魅力をもつ町である。マニアックだから、それぞれの分野でマニアックなギャラリーを町に点在させようではないか。例えば、アナログ音響博物館はどうだろうか。ジャズやクラシックのLPレコードで、オリジナルかセカンド版のコレクションと音響機器のコレクションだ。団塊の世代以前には、音響のマニアが随分存在していて、そのコレクションがデジタル時代に育った世代に理解されず、埋もれている。その宝を尾道で守ろうではないか...云々。」
時計の針がいつの間にか、ズンズン進んだようで、ノルウエーの次はフィンランドのシベリウスかと思っていたが、閉店時間の6時となり、LPレコー鑑賞会は本日は幕切れとなってしまった。
余談だが、このアイデアは今秋(2007年)にも設立予定のNPO法人(仮称)「尾道アート・コミュニケーション」で正式事業として採用されるはずである。









