魚の新鮮な尾道だから、当然生け簀は料理屋に多い。ところが、生け簀の中には魚ばかりではない。この店には「万年筆の生け簀」(写真/上)があったのだ。
薬師堂通りのまん中あたりに尾道市内で唯一の「平田公明堂」という万年筆の専門店があったが、残念なことに2005年に廃業された。この平田公明堂は、その昔、カーバイドを削って作る手作り万年筆の製造も手掛けていたという。
ふだんは見なれ過ぎて見逃してしまう風景がある。ご多分に漏れず、平田公明堂(万年筆屋)のショウーウインドも14〜5年くらい前まで吾輩の脳細胞の記憶にはなかった。
たまたま、現代芸術家というべきか、マルチアーチストというべきか、考え込んでしまうほどの極みの達人で、吾輩が敬愛する赤瀬川原平さんが、町歩きをしているときに発見した物件なのだ。赤瀬川さんの見立てによると「これは万年筆の生け簀だね」
ご主人の意図的な遊び心か、はたまた、ご自分の仕事の歴史を刻んでいたのか、定かではないが、店前の一番目立つところに万年筆の山。これぞ万年筆屋の看板に相応しい。
と、いいながら、この風景はもう見ることができない。唯一、軒先きの「万年筆 平田公明堂」の屋号の看板(写真/中)だけが現在も意識的(?)に残されている。
ちなみに「万年筆の生け簀」は写真(中)の向かって左端にあった。
吉報がある。平成18年3月4日にオープンした尾道商業会議所記念館(商業会議所設立30周年記念事業として1923年に建設された、当時としては珍しい鉄筋コンクリートの建築物)の1階に、万年筆 平田公明堂のコレクションである手作り万年筆が飾られているのだ。(写真/下)









