高橋玄洋先生を慕って、尾道、奈良、所沢と帯広から集まる「玄洋会」の会合場所が、このたびはこのR山荘なのだ。
山の斜面をそのまま生かし、自然破壊を極力回避した山荘の建て方には、R社の社長の思想が読み取れる。
斜面に建つ山荘の玄関へと繋がる20mを越える長い木造の橋には、木の葉が敷き詰められ、この山荘を訪れる人々の歩行を優しく包み込む。
玄関のドアを開け内部に入ると、もうその空間は、あらゆる外部の情報と街の喧噪を遮断し、自然の真只中に身を委ねられるという贅沢が許される世界だ。

以前にヨーロッパで買い求めていたというドアや把手、椅子が素朴な落ち着きを演出している。その中で唯一、正面の壁に飾れれた小泉淳作画伯の「シーラカンス」の墨絵が異彩を放ていた。

この山荘は三つの棟で構成されている。一つは、町道から木製の橋で繋がったエントランスホールとキッチンと広い食堂、そして寝室からなる棟、二つ目の棟は25畳位の広さの雑魚寝の部屋が2部屋、そして最後の棟は大きな浴場にサウナと洗面所がついていて、それら三つの建物が斜面に横並びに建てられ、小道で繋がっている。(当然ながら、すべての棟にトイレが完備されている。)
これらの棟がカラ松林の中に道路を隔てて建っていると想像すればよい。

数名の者が浴場に入り、カラ松の林を目の前にして、ホッと気を緩めながらいい湯だなに浸っていた。この浴場は天井が高く、洗い場に鏡はない。(洗面所にはもちろん鏡はある。)「SIMPLE IS BEST」という設計なのだ。それにしてもガラスが曇らないなぁ、と誰もが思っていたふしがある。
どこともなく、微風が入ってくる。そして、蝶が「アレ、アレレ?!」
中へ入ってくる筈のない蝶が気持ち良さそうにこちらにフワリフワリと飛んでくるではないか!!
それで、分った。この浴場は露天なのだ!! みんな大笑いだ。目の悪い典型的な日本人ばかりではないのだが...。この浴場、写真左側に大きなガラスの引き戸があって、今はちゃんと格納されているのだが、冬場には閉められるのだそうだ。
札幌から馳せ参じたというレストランのシェフとスタッフ4〜5名による、手の込んだおいしい料理とポルトガル産ワインの勢いもあって、玄洋先生を囲んでの談笑は、いつもながら大いに賑やかであった。
そして吾輩、いつものことながら、肝心要の写真を撮るのを忘れてしまった。それは十日間塩漬けした後、10時間低温で煮込んだという豚のもも肉のブロックだった。考えれば、考えるほど、あれは勿体なかったと後悔するが、後の祭りだ。

雰囲気に飲まれ、ワインにどっぷり漬かった身体を布団に沈めた途端、眠りこけてしまったらしい。
早朝に目覚め、テラスに出ると、爽やかな風がカラ松林を揺らし、小鳥のさえずりが迎えてくれた。林の向こうには遠く活火山の十勝岳が見える筈である。









