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小林和作とは

高橋玄洋氏がとらえる和作像とは....。
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 尾道のアマチュア劇団NPO法人尾道てごう座が2006年11月、小林和作を題材とした演劇「花と天丼一杯」を公演した。その公演プログラムに小林和作を的確に捉えた逸文を高橋玄洋氏が寄稿されていたので是非とも紹介したい。




        怪物の正体を

 和作先生をどう捉えるかはこちら側の問題だと思う。浅く掬うのは簡単だが奥深く探していくと可也りの苦闘を強いられる。その点こちらが先生に計られているのかも知れない。
 私が尾道で先生と初めて出会ったのは戦後間もない19歳の時だった。その衝撃は「同じ人間にもこんなに器の大きさが違う人もいるのか」という驚きだった。こちらは鉛筆の太さなのに先生はドラム缶の太さである。比べるにも桁が違いすぎる。怪物に思えた。
 その後、仕事柄有名人と呼ばれる人たちとも多く出会ったが怖じけることなく付合えたのは間違いなく先生のおかげだった。
 怪物は正体を見せない。輪郭さえはっきりしない。底知れぬ深さを持ち、時には異常と思える行為を平気でやってのけるが、その根元はどこから出ているのかは決してみせることがない。
 先生が人情家で金銭面でも大いに人の面倒をみられたことは有名だが、その一方で大変な倹約家の顔も見せる。努力の人だったと評する者のいれば天才的に人生を楽しんだ達人というファンもいる。ユーモアに富んでいたことは確かだが、なかには怖くて仕方がなかったという者もいる。いずれも間違いではないが、いずれも先生の一面に過ぎない。
 それらの全てを統合して人間小林和作が存在するわけだが、こちらに巨人の大元を捉む力が足りないから、つい一面で把んでしまうことになる。
 今回の舞台では先生本人は登場しないという。私も賛成である。仮に先生役の俳優が絶妙の演技をしたところで、所詮は先生の猿真似になってしまうし、あの品位や味は再現出来るわけもない。個々のエピソードから観る側でその奥にあるものを推測するしかないのだと思う。そこが先生の怪物たる所以であり真骨頂でもあるのだ。
 和作先生を知ることが出来たのは大いなる幸運と言わなければならない。しかし、和作先生の芯を把むのはことら側の問題である。
 富士山を知らない日本人はいないが、ほんとうに富士山を知っている人間は極めて稀だろう。今回の舞台が怪物和作をほんとうに知る手がかりになることを願ってやまない。それは間違いなく、今を生きるわれわれの糧となる筈である。
                  高橋玄洋



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