「演奏していても髪が崩れないんだよね。散髪に人間国宝があるとしたら、まさに小田原さんだよ。」とは音楽の天才・武久源造氏の言葉。
平均3ケ月に1度は、東京から尾道にやってきて、長くなった髪を切ってもらう。そんなことが14〜5年間も続いているか。
とにかく、人一倍髪が多い武久源造さん。その髪型が一ヶ月経っても崩れない、のだそうだ。小田原さんはどんな技術でもって散髪をするのか。興味津々の吾輩は、今がチャンスとカメラを構え、その一端を記録することが務めだと決め込んだ。
まず、多い髪をすくことから始る。特殊なギジョギジョの刃が付いたハサミで髪をすく。ジョギ、ジョギという音を立てながら、ハサミが髪を切っているらしい。
らしいといういのも、普通、ハサミはジョキッと音がして、バサッと髪が下手へ落ちて行くものだけれど、ギジョギジョのハサミでは、ジョギジョギと音がしても、バサッと髪は下に落ちないのだ。
ここで大切なのは、髪をすく場合は絶対に髪を濡らさないことだという。何故か。答えは簡単。髪が濡れると、ギジョギジョハサミで切った髪が、切らない髪に絡んでとれなくなるからだ。実際、濡らさない髪は櫛を入れると簡単にゴッソリとれて行く。
次に小田原さんのハサミは研ぎが違う。京都の本山の研ぎ石で入念に研いでいるから、切れ味がちがう。普通、武久源造さんのような太くて腰のある髪をまとめて切ろうとすると、髪が逃げてうまく切れない。ところが、小田原さんは自慢のハサミで一度にスパッと切るのだ。見ているだけでも実にスキッとする切れ味なのだ。
まだまだ解説しようかと思ったが、「技は見て盗め」だ。甘やかしては、腕の良い弟子は育たぬ。ここは心を鬼にして、吾輩の口にチャック、チャック!!









