尾道では、当たり前のことだと思っているのだが、ほかの町ではそうは行かぬらしい。どうやら、尾道人は数百年の昔から、それなりにおいしいものを食べていたようで、舌の味覚が鋭敏なのだろう。鋭敏だから、口うるさい。うるさく客に言われるものだから、料理人もついつい汗だくの真剣勝負だ。「おいしくない」ものを客に食べさせると命取りだ。そんな店は、たちまち消え去る運命となる。
尾道人がそうなのだから、そこで暮らす猫たちも舌がこえるのも当然の話だ。そんなわけで、吾輩の薦める食事処は美味しいに決まっている。
前置きが長くなってしまった。本筋に戻るとして、尾道には「おいしい」ものがいっぱいあるのだ。その一つが、尾道周辺で捕れた魚たち。「タイ、メバル、アナゴにアコウ、フグにワタリ(渡り蟹)、キスにイワシ、ゲンチョウにギザミ、ヒラメにコチ...まだまだあるが、これくらいにしておこう。
そんな中で「おこぜ(虎魚)」という魚、これも是非とも味わせてあげたいもの一つだ。天下一品のグロテスクな顔をしている反面、実に繊細な美味しさのある白身だ。一匹丸ごと空揚げにしたり、造りにして残りの頭と骨を空揚げにしてバリバリ食べるのも良い。
それにしても調理は大変だねぇ。背ビレの毒針に刺されぬよう気を配らなければならない。少々身を切られたところで、ヘッチャラの執念深さには吾輩、正直驚いた。底もの(海底に棲む魚)はしぶとい(生命力が強い)のだそうだ。
食事処の「すゑ膳」は、カウンター越しに主人の包丁さばきを目の当たりにすることができる。そんなわけで、「おこぜ」の造りに、タコ天の調理法を実況録画することにしたのだ。
吾輩事で恐縮であるが、この店では、おいしい魚を食した後は、これまたおいしい「ウニめし」や「シャコめし(写真上/右)」で締めくくるのが吾輩の定番である。







