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尾道クレーン物語

栄枯盛衰は世の常とは云うけれど、あの元気だったクレーンが....。
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 尾道の風景に溶け込んでいた巨大なクレーンが静かに姿を消した。暗夜行路にも描かれた尾道の造船所のシンボルとして、尾道の都市空間に大きくその存在を誇示していた、あのクレーンが突然、姿を消したのだ。
 かつては日立造船向島西工場の最新鋭クレーンとして、捕鯨船のキャッチャーボートなど数多くの新造船を誕生させた。そのクレーンが栄枯盛衰の世の流れにさらされ、無用の長物として呆然と立ち尽くすことになった。
 2004年4月、そのクレーンが再び晴れの舞台を与えられた。産業遺構としてのクレーンをオブジェと捉え、ライトアップすることで、尾道の夜を演出する大役を仰せつかったのである。(余談だが、2005年7月から2006年5月までの10ヶ月間、映画「男たちの大和」撮影のための実物大の戦艦大和のロケセットが、彼らクレーンたちの足下で組み立てられ、解体されていったのだ。)
 ライトアップでは、高さ37mから高いものになると92mもある6基のクレーンが、白、赤、青、黄、緑、紫の六色の水銀灯で生き生きと夜空に浮かび出されたのである。吾輩にはまるでお伽の国の玩具クレーンという印象だった。
 このクレーンたちが2年もの間、尾道駅前の空間を豊かにしてくれたのだ。そのご褒美が2004年度のグッドデザイン賞の受賞となった。受賞対象名は「日立造船向島西工場 巨大クレーンライトアップ」だ。
 やがて終焉のカウントダンを余儀無くされた。2006年8月31日、多くの市民に見送られながら、その華やかな役割を終えたのだ。数日後、クレーンは無機質の鉄の固まりとして解体されていった。まるで雌のカマキリが雄のカマキリを食べて行く、そんな悲しい情景を吾輩は連想したのだが...。 

 ライトアップされた勇姿と解体過程の写真データは、鍋島修三歯科医師にご提供いただいた。彼の経営する鍋島歯科医院からは、このクレーンたちが対岸に聳え立ち、日常の風景の中に溶け込んでいたのだ。彼等を愛おしむように、待合室にはライトアップされたクレーンの勇姿をとらえた写真が飾られている。





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