
大都会東京には高層ビルと車と人、人、人とうんざりするほど人が多いことを知ってはいるが、地方の小都市にはない緑豊かな空間が予想を越えて実に沢山あることには驚くことが多い。
今どき旬の六本木ミッドタウン、その3階のとあるイタリアン・レストランの窓越しに座り、無数のワイングラスの中にある木々(写真/上)を眺めながら遅い秋を見ていた。
昔から吾輩は大きな窓ガラス越しに外を眺めるのが好きで、出窓の小さな空間に身を寄せながら外を眺めるのも好きだった。
「そう、出窓の小さな空間が好きだったなぁ」と思い出していたら、ふと、C.ブロンテの小説「ジェンエア」の出窓を描いた一節が、なぜか遠く甘い記憶として脳裏に浮かんでくるのだ。その一節がどんな場面であったのか今では定かではないが、不思議にそう思えるのである。
ひょっとしてそのこと自体も、思い違いかも知れないが、過去の記憶というものは詮索もせず、甘美なオブラートに包むのも良いではないか。
ここ数年よく泊まる渋谷のTホテルの最上階にある朝食場所から眺める風景も、新宿副都心の超高層ビル群を背後にした明治神宮や新宿御苑の緑豊かな森が美しく、実に爽やかだ。
初めて訪れた「神代植物公園」も実に良かった。漫画家かわぐちかいじ氏に深大寺蕎麦を食べに行こうとお誘いを受けたのだ。
渋谷から井の頭線吉祥寺駅で下車、タクシーで20分くらい走ったところに、その公園はあった。中に入ると広大な敷地にケヤキをはじめ大きな樹木が立ち並んでいた。目の前に拡がるこの光景が、「あの武蔵野の雑木林なのだ!!」と、吾輩の心が少しばかり動いたのは言う間でもない。
木立を抜けるとヨーロッパ風の庭園に美しいバラたちが咲いていた。11月も中旬を過ぎたというのに、東京はまだまだこれから深まり行く秋の色だ。









