尾道が誇る国宝・浄土寺本堂で何百年と続く護摩法要の中に、吾が身を置くことで 何かしら安心感を覚えるのだ。歴史の中の一コマに、吾輩も厳然と存在しているのだという実感なのだろうか。
力強くカ〜ン、カン、カン...と打ち続けられる雲版(うんぱん)の音を合図に参詣者は、回廊を渡り厳かに本堂内に移動する。本堂入口で僧侶に香を与えられ、両手に擦り込む。
浄土寺六十七世の小林暢善住職を筆頭に僧侶7〜8名が入堂。秘仏の御本尊・十一面観世音菩薩が安置された須弥壇の前に長老と住職が座し、やがて護摩法要が始まる。大金(だいきん)のゴ〜ンという驚くほど余韻のある美しい音色、僧侶たちの読経が心地よく堂内に響き渡る。
「おんまか きゃろにきゃ そわか」という十一面観世音菩薩御真言の大合唱と共に大金、大太鼓や木魚が打鳴らされて行く。
護摩壇に座した住職により護摩木が積み重ねられ、蝋燭の火が移される。さまざまな作法を経て護摩炉の火は鮮やかに燃えたつ。その炎の揺らぎと読経が合い和し神秘的な空間を創りあげて行く。

余談だが、吾輩は護摩壇のあるものに注目していた。それは写真(下/左)の数本立てられた青竹の筒だ。和紙が巻かれ、「具一切功徳」の下に「尾之道」と書かれていた。オノミチは、浄土寺では「尾之道」と書き伝えられているらしい。古はそのような表記だったのだろう。
そして、さらに興味をもったのが青竹の筒の中にある「酒ではない酒」である。「はんにゃとう」と一般的に呼ばれる液体で、その漢字はどのようなものかと、好き勝手な想像を巡らせていたのだ。
今回、その疑問が解けたのだ。「はんにゃとう」とは「般若湯」と書き、護摩の熱で燗をされた「酒でない酒」だったのだ。道理で香ばしい味わいのお湯で、呑んでも呑んでも....と思っていたら、いつの間にか酔っぱらってしまった。

写真(上/右)は、おみくじ(大吉)のクジで吾輩の手許に届いた干支「亥(イノシシ)」のお守りだが、吾輩の目には愛嬌のある「ブタ」に見えるのだ。
実はこの見方に間違いはなかった。ご本家である中国の干支は「亥」ではなく「ブタ」であり、財を表わすという。この体内にまたおみくじが入れてあり「吉」であった。
ちなみに、<大吉>のおみくじには次のように書かれていた。
「ときくれば 枯木とみえし やまかげの
さくらも 花の さき においつつ」









