高さ3メートルはあろうかと思われる防火用鉄筋コンクリートの壁(写真/左)は、半世紀以上もの間、江戸時代の豪商「灰屋」橋本家の別荘を囲い、尾道町と隔絶させていた。
その壁が、無惨にも目の前で壊されて行く。日常の記憶に刻まれているものが、ある日突然姿を消すというのは、何とも言えず寂しいねぇ。
この壁は二つの理由で壊される運命となったという。一つは、今から30〜40年前の価値観で計画された道路拡張計画をそのまま実行するという行政的合理性、もう一つは橋本家の日本庭園の一部を一般公開するという尾道町の再生計画のためだ。
壁破れて庭園あり。時代を隔絶してきた壁が壊され、苔むした庭石や樹木が、数百年の時間を越えて、現代の尾道町のどまん中にむき出しに放り出されたのだ。永い眠りから未だ目覚めぬ庭には、しっとりとした古の空気が漂い、何とも心地よい。
尾道町を取り囲む三山は緑豊かだが、町中にはほとんど緑が無い。大樹がない。木陰がなくて、憩いがない。そんなところへ、橋本邸の日本庭園の大樹が出現したのだ。歩道や道路といった公共空間に大きな樹木が根をおろし枝を広げる様は想像するだけでも魅力的だ。これは、諸手をあげて喜ぶべきか、と思っているのだが、道路拡張に邪魔だからと、ひょっとして伐採しようなんて馬鹿なことは考えないだろう、と吾輩は信じるのだが...。










