土堂本通りの桂馬蒲鉾店の東角から土堂海岸通りに抜ける路地がある。この路地は尾道では一番よく知られたところで、尾道では数少ない風情のある石畳の路地として有名だ。もともとこの路地の一帯には魚市場があった。丸みを帯びた石畳をジッと見ていると、往時の賑わいが聞こえて来そうだ。海が見える路地というのは、今では珍しくなってしまった。先が見えない路地の面白さとは対照的に、向こうに抜けて尾道水道(海)が見えるという開放感も実にいい。それにしても、道標には石畳小路となっていたが、いつからそんな名前になったのか。ちょっと単純すぎるが、尾道では一番美しい石畳ということで、そんな名前が自然に定着したのかも知れない、と思っていたがどうやら尾道市商工観光課が名付けたらしい。この石畳小路を出た海岸通りには、かつて賑わいのある魚市場があったが、1970年代に現在の東尾道ベイタウンに移転している。
好物の魚の臭いも染みついているような....と、ピクピク吾輩の鋭敏なアンテナが感じていたら、なるほどその理由(わけ)が分かった。この石畳の両側には桂馬蒲鉾の工場があるのだ。今も昔も魚に縁のある路地なのだ。雨上がりのしっとりした石畳を歩いていると、実に気持ちいい。そんな風情を生かそうと、桂馬蒲鉾店が駐車場の垣根を和風にする気配り。景観をつくるとはこのことなんだね。ありがたやありがたや。