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不思議!日本遺産の尾道市では近代建築が絶滅危惧に

尾道のまちづくり/Machizukuri> 「猫に小判」の文化遺産/CulturalHeritage

「猫に小判」の文化遺産/CulturalHeritage


「猫に小判」の文化遺産/CulturalHeritage

尾道的風情のあった土堂海岸通り


かつて、海側にある建物を全面的にセットバックさせ、道路の拡幅をした以前(1980年代後半)の土堂海岸通りには、車の通行は少なく、北前船が行き交う港町尾道の江戸時代の遺構であった当時の曲がり雁木、尾道では明治を代表する建築物の旧協和銀行、昭和では戦後の動乱期に作られたバラック建築など、尾道的風情を持った歴史的建築物が点在していた。ところが今から二十数年前あたりから、風景が一変してしまった。「猫に小判」の文化遺産/CulturalHeritage

尾道が日本の高度成長時代の流れに乗り遅れたことで、自信を無くした当時の大人たちは、トラウマから逃れる唯一の方法として「スクラップ&ビルドこそが、都市の成長」なのだと信じてしまった。その結果、時代の流れを読みとることもなく、尾道の未来に大切な多くのものをためらいもなく捨て去った。
車社会を最優先させていた一昔前の価値観に何の疑いも持たず、経済の流れに乗り遅れる地方都市のこの種の風潮は、残念ながら今も変っていないように思える。
芸術や文化が経済を誘引・誘発するというダイナミズム、近未来の地方都市が避けて通れない人口減少によるコンパクトシティ化の波、求められる歴史を生かした感性豊かなスローシティ化等々、時代の流れは大きく変化しているが、この尾道では、そうしたことにはまったく無頓着で、目先のトレンドを追い求めるだけでは、将来的な尾道市の存在すら失なわれていくという可能性があることの危機意識はないようだ。(2010年)「猫に小判」の文化遺産/CulturalHeritage

その後、10年が経過して


既述の拙文を書いた10年後の2020年の尾道では、今もなお、昭和の建築物がどんどん取り壊されている。「近代建築における昭和の歴史」そのものを尾道はこの地上から完全に消し去ろうとしているようだ。近代的建造物を解体するということは、その建造物が持つ歴史的記憶を消し去ることで、歴史の記憶を消すことは、歴史都市・尾道が歴史を捨て、どこにでもある普通の都市になるという不可逆的宣言でもあろう。「猫に小判」の文化遺産/CulturalHeritage

吾輩がひとり(一匹)勝手に尾道市政に危機感を抱き始めて、かれこれ34〜5年が経ってしまった。その間、既述の江戸時代の曲がり雁木、旧協和銀行、県営上屋1号棟、戦後のバラック建築、そしてここ数年では、建築家・増田友也設計の旧尾道市庁舎と公会堂、尾道駅舎、次なる危機が感じられるものは尾道市立久保小学校土堂小学校、広島県立尾道東高校の煉瓦塀、そして千光寺山山頂の円形展望台などが、絶滅危惧種から絶滅へのステップに移行しつつあるようだ。(2020年2月27日)
最近の吾輩の脳細胞もかなり性能(と言っても標準タイプの性能)を落としたようで、デジャヴを体験しているような気がしてならない。この文章を書いたまま、公開するのをまた忘れていた。
2020年7月10日の今日、この『尾道市では「猫に小判」の文化遺産』というタイトルをつけた文章を吾輩がバックヤード(非公開のところ)に置き忘れていることに気がついたのは、全くの偶然だった。今から10年前に書いた文章を公開するのを忘れ、それから10年後の2020年2月にやっとそれに気付いたものの、またもこの文章は5ケ月の間、忘却の彼方に追いやられていた。そして偶然のいたずらで、5ヶ月余りの記憶の空白がやっと埋められるに至ったのだ。公開もあと数日のことだろう。それともまたデジャヴとならぬよう吾輩の猫の額にまじないをすれば、ちゃんと忘れずにいられようか。兎も角も忘れ物を見つけて思い出しただけでも良しとするか……。ひょっとして吾輩の心の奥底に、こんな情けない尾道に何も言いたくないという気持ちがそうさせているのかも知れぬ。「猫に小判」の文化遺産/CulturalHeritage

専門家の知見と不可解な市政の言葉


今でも明確に記憶しているが、平成25年6月に安倍内閣の閣議決定を受け、文部科学省は「インフラ長寿命化基本計画」を策定した。そして、その前提となる「耐震改修による耐用年数の延長」を可能とする野口貴文(現・東京大学教授)が実証した資料が、同省のWEB SITEに掲載された。「猫に小判」の文化遺産/CulturalHeritage

その資料「高経年化した建築物でも現在の技術によって再生は可能」という野口教授の意見を紹介し、尾道市は、市庁舎新築を止め文化的価値もある旧市庁舎を耐震改修すべきだと主張すると、尾道市のS副市長が「それは単なる一学者の説だ。」と吾輩の飼い主に野口教授の実証資料を一蹴をしたことだ。この発言は平成26年広報おのみち4月号で、「耐震改修を行なっても耐用年数は伸びない」「耐震改修をしてもすぐまたメンテナンス(補修)が必要になるから耐震改修は二重投資となる」という尾道市の見解と一致している。旧市庁舎と公会堂を解体するために、日本政府の閣議決定をも否定する尾道市の政治的見解を明確にしている。
内閣府のデータをもとにした広島県の南海トラフ巨大地震情報を見ると、尾道市では地震とともに最大3.5mの津波が押し寄せるとなっている。海辺に新築した新市庁舎は周辺が液状化するため、孤立状態となることは想像に硬くない。まして液状化対策としての地盤改良をしていない新市庁舎の免震構造が地震と津波の影響を受けても問題ないという尾道市の見解をどのように受け止めればいいのか、残念ながら吾輩の脳細胞の中には、尾道市政の言葉を理解できる辞書を持ち合わせていない。「猫に小判」の文化遺産/CulturalHeritage

驚きの避難勧告


7月7日の夕刻、尾道市の安全・安心メールがけたたましい音を立てスマホに入ってきた。集中豪雨による警戒警報だ。しかも【警戒レベル4】。これは【警戒レベル5】のすでに災害が発生している段階の手前だから、これは尋常ではない。その内容は下記の通りだ。

尾道市 安全・安心メール:送信日時:07月07日 18時58分尾道市から緊急連絡。避難開始。
発令内容:18時50分、【警戒レベル4】避難勧告 対象地域:市内全域
理由:明け方にかけて集中豪雨の危険性が高まっている避難が必要な方:土砂災害・川沿いの危険な場所にいる方
行動要請:速やかに安全な場所に避難を開始。外への移動が危険な場合は崖から離れた2階以上の部屋に避難。
▼開設避難場所は次の通りです。
【旧尾道地区】
旧原田小学校体育館、旧原田中学校、尾道市農業協同組合旧原田出張所(1・2F会議室)、中央公民館木ノ庄東分館、農村環境改善センター、美木原小学校、美木中学校、尾道市立大学、中央公民館久山田分館、西藤小学校、割石ふれあい館、栗原北小学校、長者原スポーツセンター、栗原小学校、総合福祉センター、いきいきサロン門田、いきいきサロン栗原、大田ふれあい館、東部公民館、尾道造船所 総合事務所1階、ひまわり認定こども園、久保小学校、いきいきサロン防地、生きがい活動推進センター、人権文化センター(2・3階)、尾道市役所本庁舎、いきいきサロン筒湯、南高等学校、長江公民館、しまなみ交流館、いきいきサロン吉浦、日比崎公民館、吉和小学校、吉和公民館、尾道商業高等学校、浦崎小学校、浦崎公民館、百島支所、いきいきサロン百島、旧向東保育所、サンボル尾道

将来の尾道に必要な知恵


尾道市は今年、小学校の統廃合を進めようとしている。そのなかで土堂小学校と久保小学校は耐震性性能や斜面である背後地の危険性を理由にあげ、解体を予定しているという。これに首を傾げたくなるのは、吾輩だけではあるまい。
2020年7月7日の18時58分【警戒レベル4】の安心・安全メールで、尾道市民の避難場所として久保小学校を紹介しているということは、尾道市は安全・安心だと認識しているという意味だ。「猫に小判」の文化遺産/CulturalHeritage

日本の建築世界で、耐震改修の意味するところが、尾道市の見解と一致するとは到底思えない。その事例が、また現実となりそうだ。土堂小学校を解体するため、4億円もかけて千光寺山のグランドに仮校舎を新築するという。路線バスもないところに移転しなくても、バス路線が十分配置され、防地口バス停留所から350Mも徒歩で行けば、空き教室の多い久保小学校があることをお忘れになっている。千光寺山のグランドへ行くよりも、通学路として遥かに安全な場所だと、尾道市民は知っている。ましてや、地方交付税頼りの尾道市の財政体質を思えば、知恵を出し無駄はできるだけ排除することが優先課題だと思えるがどうだろうか。
なぜ市民の大切な児童が通う久保小学校や土堂小学校の耐震改修を急がないのか、と疑問に思っていたが、それは当初より行政内部でスクラップ&ビルドで解体をすることが前提となっていたのではないかと推測することも、あながち間違いではないかも知れない。
久保小学校と土堂小学校を耐震改修することは、いつ来るかわからない災害時に児童の安全を確保し、市民の堅固な避難場所とするためであり、結果として将来的に文化的価値のある日本の近代建築物を保全し、文化的経済的な資源として確保することが可能となる。近代建築を解体するために、便利よく「安全」という言葉を巧みに使う行政には、そういった知恵はないのだろうか。(2020年8月16日)「猫に小判」の文化遺産/CulturalHeritage

尾道市民にはどんな夢が将来にあるのだろうか


今後、毎年概ね1.1%の人口減少が明確な尾道市で、市の行政機能を集中させるためという巨大建築物は、南北に広がる市域を考慮しても、災害時のリスク管理の上でも、経済効率や市民の利便性を考えてもまったくの時代遅れだが、尾道市がかつて「歴史的景観を守る会」の活動を無視し、2〜30年の間に多大の代償を払ったことも未だに理解していないようだ。大林宣彦映画監督が、このまちは「一周遅れのトップランナー」と言われていた意味を理解しないまま、世の流れからその存在までも忘れ去られる道を歩むのだろうか。
最近、ニュースで流れる高速道路の逆走問題と本質は同じではないのか。スクラック&ビルドという時代遅れの価値観を金科玉条のごとく信奉する、そんな尾道市に思えてならない。少子高齢化と急激な人口減少、域内経済の萎縮、迫り来る地方交付税減額と市税の減収、合併特例債の借入金返済、市財政の硬直化、教育レベルの低下、さらに吾輩たち一般国民には想定外のCOVID-19(新型コロナウイルス)がもたらした経済的ダメージ、確率の高い南海トラフ巨大地震と津波など、高速道路で逆走すれば、最悪、その先にはどんな結果が待ち構えているか、その予測もつかないのだろうか。(2020年8月15日)「猫に小判」の文化遺産/CulturalHeritage

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