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かわぐちかいじ

(かわぐちかいじ)漫画家
かわぐちかいじ
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尾道ファン倶楽部・特別会員



 『私は、小金井市という東京の片田舎で暮らしています。東京で暮らすようになってすでに20年、高校を卒業するまで尾道で育った18年より今では永くなってしましました。しかし、不思議なもので何年住んでも東京近郊の現住所に愛着が湧いてきません。郷里意識、わが街という実感がないのです。やはり、わが街というと私の場合、尾道ということになります。
 尾道の街には臭いがあります。少年時代から体にしみ込んだ香りがあります。海の香り、魚の香り、鉄工所の鉄とペンキとオイルの香り、お寺の境内の木々の青い香り、今瞼をつむると香ってくるようです。その香りが東京の街には感じられません。しいていえば自動車の排気の香りでしょうか。
 先日、友人に誘われ花見をしました。場所は友人の住んでいる新興の団地の広い公園でした。ハイテクを駆使した新しい住居、若木の多い芝生の公園、なるほどキレイではありましたが、どこか息が詰まるようでやすらぎを覚えませんでした。それは作られた遊園地、おもちゃ箱の趣きでした。自然はあるのですが、歴史が無いのです。
 人間の先祖代々住んできた歴史の香りが無かったのです。若い桜を見ながら、ふと尾道の街並を思い浮かべました。何故、尾道の街並を歩きながら、様々な香りに包まれるとやすらぎを覚えるのか、わかった気がしました。街角のスミズミに人間が代々生活してきた歴史が感じられるのです。昔からその街で生まれ生活をしてきた人々の影がそこかしこに感じられ、その人々と精神的な会話を交わしてるような気分になるのです。そして自分が今眺めている風景の過去の姿が見隠れし、その風景と会話するのです。
 私が尾道の街にやすらぎを覚えるのは、この会話のような気がします。』
(1988年 備三タクシ−発行のパンフレット「尾道がんぼう」より)

【プロフィール】
1948年 尾道市生まれ。明治大学国文学科卒業。
1968年「夜が明けたら」でデビュ−。
1987年「アクター」で第11回講談社漫画賞。
1990年「沈黙の艦隊」で第14回講談社漫画賞を受賞。
2002年「ジパング」で第26回講談社漫画賞を受賞。
2006年「太陽の黙示録」で第51回小学館漫画賞を受賞
2006年「太陽の黙示録」で2006年度文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞を受賞
2018年「空母いぶき」で第63回小学館漫画賞を受賞。

【代表作】
「黒い太陽」「唐獅子警察」「プロ」「ハ−ド&ル−ズ」「獣のように」「アクタ−」「メドゥ−サ」「沈黙の艦隊」「YELLOW」「アララギ特急」「イ−グル」『ジパング』、『太陽の黙示録』、『空母いぶき』などがある。


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