初めて会ったとき(1985年)はどちらが兄で、どちらが弟かわからなかった。兄は漫画家・かわぐちかいじ(写真/中:川口開治)さん、弟は川口石油の社長・川口協治(写真/上)さんだ。
一卵性双生児の彼らの電話のやりとりは、「あれはどうだった?」「う〜ん。あれはなかなかいいんじゃないか。」と、まるっきり、周りのものには理解できない「あれそれ」という会話だ。どうやら、かわぐちかいじさんの連載ものの批評をしているらしい。
幼い頃から二人には共有する世界があった。そして成長するにつれ二人とも漫画の虜になっていた。マンガの無い世界は二人には考えられなかった。
そんな彼らに大学時代に転機が訪れた。どちらか一人が家業を継ぐ決断を迫られたのだ。兄は東京に残り漫画家となり、弟は尾道に帰り、家業を継いだ。
川口協治さんは、家業に精出しながら、その合間、今も漫画を描き続ける。彼のテ−マは起承転結の四コマ漫画だ。10日に一度の経済誌への連載「団塊くん」は300回で終え、新たに「家族戦記2010」を63回連載中だ。ほかに建築士会会報では「ひろしまLADY」、仏教誌に「UNCLEせんぞう」、法人会会報の「イロハのイの異」、異色では尾道の路地裏を徘徊する猫をモデルに、「吾輩は猫である」の末裔と自称する尾道よろず案内役「路地ニャン公」と彼の生んだキャラクタ−は多忙をきわめる。
そんな彼が一昨年、ライフワ−クとしていた漫画を完成させた。尾道の名誉市民で、風景画家の小林和作の漫画本「花を見るかな」だ。尾道ゆかりの作家・高橋玄洋著「評伝 小林和作」を原作とし、脚本・高橋玄洋、監修・かわぐちかいじ、画・川口協治(1948-2013)という豪華な顔ぶれである。
2012年春に病魔に襲われ、一年間の闘病生活を続けていた彼だが、2013年4月30日午前5時頃、「カットアウト」で65年の人生を括った。誠に残念である。多くの足跡だけが今に残っている。