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2021年の大晦日で、尾道のトタン製品を造りつづけてきた創業102年の内海製作所が、廃業されることがわかりました。誠に残念です。大量生産の海外ものと違って、手作りに近いものだけに、その丈夫さには秀でるものがあるのですが、価格だけで判断されるご時世には、馴染まないのでしょうか。廃業の大晦日までは、毎日製品を造り続けられるということで、当面は在庫で、ご興味のある方のご注文には対応できそうです。(2021年11月1日)
大正9年(1920年)創業の老舗が作り伝える『おのみち如雨露(ジョウロ)』(散水用)
「ポリジョロ(プラスティックのジョロ)じゃ風情がないよ。やっぱりトタンの如雨露だねぇ。」という風流をお好みの方は、おのみち如雨露が最適だ。
如雨露(じょうろ)は、如露(じょろ)とも書き、語源はポルトガル語で噴出の意味のジョルロjorroに由来するといわれる。使い捨ての世の中だからこそ、使えば使うほど味が出るトタンという材質でつくられた如雨露は絶品だ。存在感があって、古くなればなったで、長い年月をくぐり抜けた如雨露の外観の色彩は刻々と変っていき、まるで生命があるようだ。
このトタン(亜鉛引き鉄板)で作られた「おのみち如雨露(ジョウロ)」は、大正9(1920)年1月創業という「内海製作所」の四代目内海隆司さんによってつくられる手作り商品の一つ。昭和30年(1950年)代の機械を使い、一人で作るので部品制作、成型、半田(錫と鉛の合金)付けなどの作業工程を経て、製造は1日に2個から3個ぐらいという。作り手の顔が見え、愛着の持てる品々に囲まれるというライフスタイルもいいものですゾ。
おのみち花器「風情」(吊り下げ用)
時間(とき)の流れとともに変わりゆく「景色(けしき)」のある花器、しかも予想もしない空間に花を生けられる花器。そんな一品ものの思いもよらぬ花器に出会った。一目惚れとはこのことだろう。吾輩の主人は、売るより先にすぐさま自分で購入したという代物だ。 そんな夢を実現させた尾道の職人技と遊び心。トタン・ブリキ加工製品を作り続けてきた100年の老舗「内海製作所」の四代目が、一品ものの花器をトタンという思いもよらぬ材料で器を作り、自らが思うがままに薬品を垂らして描く。時間と化学反応と四代目の職人技がコラボレーションというわけだ。
「潮風が風情を運ぶまち」とは、赤瀬川原平(現代芸術家、作家)が尾道を訪れたとき、錆びついたトタン塀を切り撮った写真のタイトルだ。永い年月の中でゆっくりと変化し朽ちていく、まるで生き物であるかのようなトタン。この亜鉛引き鉄板を花器に加工し、薬品処理で様々な模様を刻み独特の風化を実現、一つとして同じものは生まれない。(壁に飾られた花器の2枚の写真は、上が2009年5月7日に撮影したもので、下の写真は2019年12月1日撮影のもの。約9年7ケ月の経年劣化により違った顔を見せている。)
この「おのみち花器」は、水を入れて生花をいけることを前提として作られている。
おのみちバケツ(蓋付き)
「トタン製品ってなんだかレトロで、スローライフ気分にはいいなぁ」と思われる方には朗報だ。使い道はご自分なりにどんどん広がるという、蓋付きのトタン・バケツが誕生した。
この製品は、吾輩たちが思っているより、相当手間がかかっているようだ。バケツの底には別枠を取り付け、本体部分の最上部には鉄線が巻き込まれている。
蓋もバケツ本体同様に手間がかけられている。蓋をよく見ると取っ手にやはり鉄線が巻き込まれている。こうすると、バケツも蓋も寿命が延び堅牢になるのだという。内海製作所に代々伝えられてきたモットー「堅牢無比」は、こんな所でも実践されているのだ。
昔は職人も7人いたようで、最盛期にはバケツだけでも流れ作業で手際よく1日1,000個を作っていたという。まさに熟練の職人技の真骨頂だろう。
バケツの写真で一番左のおけ(型)バケツ大は井戸の釣る瓶(つるべ)に使われたサイズで、真ん中のおけ(型)バケツ小は漁師が木製の漁船を海水で洗うときに使われてきたサイズだという。小バケツは、小物のバケツということで、雑魚(ざこ)が尾道弁でジャコとなり、じゃこバケツともいわれている。こんなところにも尾道町のあちこちに多くの井戸があり、吉和、土堂、尾崎の三ケ所の漁港をもっていた尾道の歴史や日常生活・文化を垣間見ることができる。
余談ではあるが???
オッホン。吾輩は路地ニャン公の祖父ニャン博士。どうやら吾輩の出番のようじゃ。鉄板を錫でメッキしたもの(覆ったもの)をブリキ、亜鉛でメッキしたものをトタンという。両者の違いは、どうやって鉄の腐食を防ぐかという点にあるんじゃ。 ブリキは錆び(酸化し)にくいが傷がついて鉄が露出すると、そこから一気に腐食が始まる。だから屋内で使用する玩具等の材料となる。 その点、亜鉛は鉄よりも酸化しやすいため、鉄より先に亜鉛が酸化することで鉄の腐食を防いでいる。トタンは、風雨にさらされ傷つきやすいトタン屋根など野外で使用されるものに適しとるんじゃ。
たばこ如雨露という名の大型おのみち如雨露
吾輩お気に入りのトタン製・尾道如雨露(じょうろ)は、タバコ如雨露とも言われる園芸用の如雨露だ。一見スリムな形をしているが、胴体に水が7リットルも入るという大物だ。これは葉たばこの苗に水をやるために考案されたもので、水を蓄える胴体から噴水口までは散水用の短足に比べて随分足長だ。人間に例えれば8頭身の美形というところか。胴体から長いパイプを通すことで、噴水口からは優しく水が流れ出るよう工夫されたもの。外形サイズは[L:約77cm×H:約36cm×W:約20cm]と散水用にくらべて3倍ほど足長だ。このタバコ如雨露、吾輩の庭(写真)にあるものだが、今は市販されていない。その理由は、(1)噴水口の継ぎ目から少しばかり水漏れしていて、まだ解決されていない。(2)送料が極端に高く、収めるダンボール箱もない、ということらしい。
それにしても会社の作業場に入ると、まさに一昔前の大正・昭和の匂いが漂ってくる。床には分厚い板が何枚も敷かれており、ズッジリとした機械という鉄の塊が作業工程の流れに合わせて据えられている。最盛期の職人たちが働く賑やかな騒音も、ふと流れてきそうな雰囲気だ。来年1月には有限会社 内海製作所は創業100周年を迎える。(2019年12月4日)
それにしても会社の作業場に入ると、まさに一昔前の大正・昭和の匂いが漂ってくる。床には分厚い板が何枚も敷かれており、ズッジリとした機械という鉄の塊が作業工程の流れに合わせて据えられている。最盛期の職人たちが働く賑やかな騒音も、ふと流れてきそうな雰囲気だ。来年1月には有限会社 内海製作所は創業100周年を迎える。(2019年12月4日)
創業102年で廃業となり、動きを絶たれる機械たち
コロナ禍の2021年の大晦日に、創業102年の内海製作所の廃業を決断した四代目内海隆司さん。木製の床にどっかり据えられていた使い込まれた機械たちは1950(昭和30)年代に作られ、現在まで働き続けて70年は経過した年代物だ。内海さんにとっては愛着のある存在感のある相棒だろう。それだけに廃棄処分とするには、ちょっと切ない思いがするのではないだろうか。ちらっと「誰かに、この機械たちがお役に立たないものか」と呟いていた。ご興味ある方は、内海製作所(0848-37-2302)にお声をかけられたらどうだろう。