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配布資料を精査すると、驚くべき虚偽の数値が

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第1回尾道市庁舎整備検討委員会/CityhallProblem06


第1回尾道市庁舎整備検討委員会/CityhallProblem06
平成25年7月5日開催の第1回尾道市庁舎整備検討委員会で、各委員に配布された資料を精査してみた。そこには、耐震改修工法の比較に関する概算工事費について、信じ難い、驚くべき数字が書き込まれていた。初めに虚偽の数値ありきである。
耐震性能Is値=0.9という国家の建物の目標値を地方自治体の一般的目標値と認識づけ、尾道市庁舎については巨額な工事費がかかる免震工法が適切であるかのように委員の意識操作をし、全体として「新築する以外にない」という考え方を各委員に明らかに誘導していることがわかる。具体的には、尾道市のホームページに公表している第1回 尾道市庁舎整備検討委員会 次第を参考に、それらのことを説明する。

■資料4ページ「耐震強度の指標(Is値)とコンクリート中性化 」


「災害対策の指揮、情報伝達の拠点となる官庁施設は一般にIs値0.9以上(Is値0.6×1.5倍)が耐震性能の目標値とされます。 本庁舎においてもその機能からIs値0.9以上の耐震性能が必要と考えられます。」と記述し、あたかもIs値=0.9が絶対条件のように誘導している。しかしながら、Is値=0.9の耐震性能とは、国家機関の建物に求められる目標値であり、地方自治体の庁舎は、耐震性能Is値=0.75を目標値とするのが一般的である。
その根拠となる国土交通省「官庁施設の総合耐震計画基準」では、災害応急対策活動に必要な官庁施設等は特に耐震安全性を高める必要があることから、「重要度係数」1.25を指標である0.6に乗じることにより、Is値=0.75を目標値としている。
またその一方で、5ページの本庁舎耐震診断結果では、本館棟に関する表の中では、「必要とする耐震性能Is値0.6」と記載している。また海辺に建つ尾道市庁舎は、南海トラフの巨大地震で想定される高潮や津波を考えると現実には防災拠点としては成立しない。したがって尾道市庁舎の耐震性能は、Is値=0.9が絶対条件ではないのである。
尾道市の主張した防災拠点としての新し庁舎は、高額な建設費を必要とする耐震性のIs値=0.9としたが、国土交通省が平成30年5月(令和元年6月1部改定)に発表した防災拠点等となる建築物に係る機能継続ガイドライン検討委員会の『防災拠点等となる建築物に係る機能継続ガイドライン』(新築版)を見ると、新庁舎の立地が防災拠点として不適当であることが明確だ。以下、そのガイドラインの一部を紹介する。第1回尾道市庁舎整備検討委員会/CityhallProblem06

『対象建築物の敷地は、大地震時に対象建築物に求められる機能に応じた広さ、形状とし、その配置は想定する機能が十分発揮できるよう計画する。
波の被害が想定される地域においては、ハザードマップ等に基づき、浸水が想定されない立地とすることが望ましいが、浸水が想定される立地とする場合は、基準水位(浸水想定による水位に建築物等への衝突による津波水位の上昇を考慮して定められる水位)以上の高さに活動場所や避難のための空間を確保すること等、総合技術開発プロジェクト「災害拠点建築物の機能継続技術の開発」による『災害拠点の設計ガイドライン(案)』(国土技術政策総合研究所)における配慮事項が参考となる。加えて、対象建築物に免震構造を採用する場合にあっては、免震層の保護や津波浮力への対策として、予測浸水深に応じ、敷地のかさ上げ、止水版の設置等を検討する。 (1-5) 液状化が想定されている地域では、地盤改良等の液状化対策を実施すべきことや、対策を講じた場合でも、道路や供給処理施設等のインフラが液状化により影響を受けるおそれがあることに留意する。』

■資料5ページ「本庁舎の耐震診断結果」


第1回尾道市庁舎整備検討委員会/CityhallProblem06
本館棟(昭和35年建築)の構造部材は、「必要とする耐震性能Is値0.6に対し、0.24程度しかなく、大地震により倒壊、又は崩壊する危険性が高い」としている。これは本館棟5階屋上に、後年増築した6階部分(元食堂)の耐震性能Is値=0.24だけを強調し、建築家・増田友也が設計した本館棟全体が耐震性能が低い(Is値=0.24の)かのように印象づけている。実際には東西方向は0.6以上のIs値であり、これは指標を満たしている。南北方向も0.3程度のIs値を保持しているので、南北方向に多少補強すれば安価に十分な耐震性能Is値=0.75を確保できる。

■資料9ページ「耐震改修工法の比較」


尾道市の説明では、新築以外に耐震改修についてもさまざまな工法を検討したとしているが、各委員に配布された尾道市庁舎本館棟に関する資料では、RCフレーム工法+RC耐震壁、Pca外フレーム工法+RC耐震壁、トグル制震工法といった免震工法に比べて安価な工事費で耐震性能を向上させる工法について、建築の専門家であれば、誰でも気付くはずだという極めて非常識な、現実では考えられない異常な補強箇所数(不必要な耐震壁や補強フレームを数多く取付け)を意図的に計上することで、巨額な免震工法(レトロフィット)+RC耐震壁の工事費に近い金額を算出し、耐震改修工事費と新築工事費の差があまりないように記載している。つまり安価な耐震補強の検討を意図的に回避させる操作を行っているという事実である。

■検討委員会で配布された耐震改修費の概算工事費


尾道市が平成25年7月5日(金)の第1回尾道市庁舎整備検討委員会の各委員に配布した資料から庁舎本館(5040u)についての耐震改修費を四種類の工法で概算工事費をご紹介しよう。尾道市の試算した耐震改修費は、新築費よりも大幅に高いという、ありえないデータ?!
■Rcフレーム工法+RC耐震壁 2,797(百万円)⇒一坪あたり183万円
■Pca外フレーム工法+RC耐震壁 3,131(百万円)⇒一坪あたり205万円
■トグル制震工法3,236(百万円)⇒一坪あたり212万円
■免震工法(レトロフィット)+RC耐震壁3,145(百万円)⇒一坪あたり206万円
*ちなみに、2015年4月26日に市長選挙があり、結果次第では、市庁舎新築が取りやめになる。それを無視して、尾道市は4月上旬に日建設計との本契約を行うと発表した。取りやめになった場合、尾道市は数千万円の違約金を負担する可能性がある。にもかかわらず、たった4週間契約日を先送りすることができないという理由は何か?!
これにより耐震改修は高額な工事費がかかると各委員に思い込ませ、公会堂を解体した跡地に市庁舎を新築することがベストであるかのように、委員会を誘導している。また委員会では少数派の異論を無視して、この重要課題を常識的には考えられない短期間で整備検討委員会の新築案支持の結論を取りまとめている。これらのことは尾道市が公表している「尾道市庁舎整備検討委員会」の議事録を読めば明白である。
資料に記載されている免震工法以外の三種類の工法の工事費が、いかに現実離れした桁の違う巨額の工事費であるかという判りやすい事例を二つ紹介する。
■お隣の広島県府中市では、尾道市の現市庁舎本館(1960年竣工/5,040u)の耐震性能より低いIs値=0.15 の市庁舎(1974年竣工、6,000u5階建て)の内部のリニューアルはせず、耐震壁を使わずPca外フレーム工法による耐震補強及び増築工事に2013年に着手し、工事費5億3,392万円(うち耐震補強に約4億円)で、2014年5月にIs値=0.675の耐震補強及び増築工事を終えている。
■次はきらめきプラザ(岡山県総合福祉・ボランティア・NPO会館)のリノベーションの事例だ。元国立岡山病院を福祉・ボランティア・NPO会館へのコンバージョン(転換)を行っている。建築面積5781u、延床面積20,816u、SRC,RC構造地上7階、地下1階という規模は、現在の尾道市庁舎本館の約4倍の規模で、内部の間仕切りを全部無くし、内装、電気、空調もやり替え、この建物を鉄骨バットレス耐震補強することで、総工事費25億3,100万円で2005年6月に竣工している。これを単純に床面積比較で、尾道市庁舎本館(5,000u)の耐震改修工事費に換算すると6億2,500万円ということになる。
*リノベーションとは既存の建物に大規模な改修工事を行い、用途や機能を変更して 性能を向上させたり 価値を高めたりすることを意味する。

★今回の市庁舎新築問題には理解できない、さまざまな疑問が数多く存在する。


(1)「地域固有の歴史及び伝統を反映した人々の活動と,その活動が行われる歴史上価値の高い建造物及びその周辺の市街地とが一体となって形成してきた良好な市街地の環境」づくりを行うという歴史的風致維持向上計画をかかげながら、数億円の耐震改修工事で耐震性能を向上できる昭和を代表する歴史的文化的価値がある建築家・増田友也の設計した尾道市庁舎と尾道市公会堂を解体し、巨額の工事費をかけ新庁舎を新築するという論理的にも矛盾する政策をなぜ強引に進めるのか。(この矛盾を解決するために、尾道市は、すでに増田友也設計の市庁舎と公会堂を歴史的風致維持向上計画から削除している。)
(2)南海トラフ大地震による高潮や津波(最大3.5m)が想定させる中で、リスクが最も高い海辺に、最も工法として不適当な免震工法による庁舎を、しかも海辺の防災拠点という常識では考えられない意味付けをして、使える現庁舎並びに公会堂を解体してまで、現庁舎の1.7倍の新庁舎を新築したいのか。
(3)建築家・増田友也設計の尾道市庁舎本館は5〜6億円程度の工事費で必要な耐震性能を確保できることは明白である。そして耐震性能を調査しないまま、当時の市民や企業が工事費の6割あまりを寄付したという公会堂は問答無用と解体しようとしている。
この時代に建てられた建物の文化的価値を理解できない歴史的文化的都市が全国にあるだろか。日本建築学会中国支部は昨年、尾道市長宛てに、増田友也設計の尾道市庁舎と公会堂の建築的文化価値を認め、保存・活用の要望書を提出している。にもかかわらず、平谷尾道市長はそれを無視し、なぜ市庁舎新築を押し進めるのか、理解できない。
ここで、昭和の近代建築の価値を理解し、智慧を使ったまちづくりを進める賢明な都市の一例を紹介し、尾道市民が合併特例債を使い公会堂を解体し、1.7倍の巨大な市庁舎を新築すえるという暴挙にSTOPをかけることを期待したい。
第1回尾道市庁舎整備検討委員会/CityhallProblem06
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青森県弘前市は、歴史的風致維持向上計画においては、建築家・前川國男の設計した弘前市役所本館(1958年)、弘前市民会館(1964年)の両近代建築とも歴史的風致形成建造物候補となっており、弘前市民会館については、既に大規模改修を終え、2014年にリニューアル・オープン。また、弘前市役所本館については、当計画において重点区域における保存修理事業として追加されている。
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