脱サラして大阪・京都で修行三昧
「すゑ膳」は、JR尾道駅から徒歩2分、中国銀行駅前支店・尾道支店の横の路地にある。後に吾輩は、この路地を勝手に「旅籠小路」と命名した。
店主は、子どもの頃から、新鮮な魚を食べて育った。だからこそ「旬のものをおいしく」が店のモットーだとい言い切る「すゑ膳」は、今年で創業31年を迎える。尾道ゆかりの脚本家の高橋玄洋、漫画家のかわぐちかいじ、実弟の川口協治といった人々愛用のお店だ。
ご主人は大学を卒業後、広告会社に就職したが、一年で脱サラしてしまった。尾道の駅前にあった旅館「繁乃家」のご子息だけあって料理好き。サラリーマン時代には飲食の支払が多く、これではやっていけないと一大決心。支払う側から支払れる側に廻った。
そして、最低でも10年かかる修行期間を5年に凝縮。尾道出身の女将が経営する大阪十三のふぐ専門料亭「雁亭」でふぐ調理免許を取得後、天婦羅を法善寺横町の京風天ぷら「牧」、懐石料理を京都の産寧坂の料亭「阪口」、季節料理や小魚料理を大阪北新地の割烹「河太郎」、そして庶民的な大衆料理を大阪空心町の「いのうえ」でそれぞれ修行したという。この大阪・京都の修行三昧が「すゑ膳」の味に生きているのは当然だろう。今日も地の魚にこだわり、腕を振るう。
店主は、子どもの頃から、新鮮な魚を食べて育った。だからこそ「旬のものをおいしく」が店のモットーだとい言い切る「すゑ膳」は、今年で創業31年を迎える。尾道ゆかりの脚本家の高橋玄洋、漫画家のかわぐちかいじ、実弟の川口協治といった人々愛用のお店だ。
ご主人は大学を卒業後、広告会社に就職したが、一年で脱サラしてしまった。尾道の駅前にあった旅館「繁乃家」のご子息だけあって料理好き。サラリーマン時代には飲食の支払が多く、これではやっていけないと一大決心。支払う側から支払れる側に廻った。
そして、最低でも10年かかる修行期間を5年に凝縮。尾道出身の女将が経営する大阪十三のふぐ専門料亭「雁亭」でふぐ調理免許を取得後、天婦羅を法善寺横町の京風天ぷら「牧」、懐石料理を京都の産寧坂の料亭「阪口」、季節料理や小魚料理を大阪北新地の割烹「河太郎」、そして庶民的な大衆料理を大阪空心町の「いのうえ」でそれぞれ修行したという。この大阪・京都の修行三昧が「すゑ膳」の味に生きているのは当然だろう。今日も地の魚にこだわり、腕を振るう。
活き造り調理法
この店では、カウンター越しに主人の包丁さばきを目の当たりにすることができる。そんなわけで、このたび「おこぜ」の活き造り調理法を実況録画させてもらうことにしたのだ。但し、見方によっては、残酷すぎるという方もあるかも知れないので、そのあたりはご容赦願いたい。
おこぜ一匹の生命をお刺身だけでなく、各部位を様々な調理法で、すべてを感謝しながら美味しく食べ尽くすのが、尾道流の作法なのだ。
吾輩ごとで恐縮であるが、この店では、おいしい魚を食した後は、これまたおいしい「ウニめし」や「シャコめし」で締めくくるのが吾輩の定番である。
最後に、活き造りおこぜ料理と尾道の尾頭付きシャコ料理の写真をお見せしよう。
創業44年で閉店
2012年12月30日(日)の営業をもって『すゑ膳』は閉店した。70歳の年にはリタイアすると決めていたご主人、創業44年を迎えたが、今年がその年だった。
お店の写真や料理の写真を探してみたが、当時は先端でもガラ系携帯で画像の質が良くない。何とかご夫妻お揃いの写真と小皿の揚げ物の写真など3枚を発見したので、載せることにした。
尾道市東御所町3-32 TEL 0848-25-4433 契約Pあり
営業時間/11:40〜14:00 17:00〜22:00 定休日/月曜日
瀬戸内海の海砂採取問題
話は若干方向を変えて、美味しい魚と海砂の関係を考えてみたい。昔から、尾道は瀬戸内海で獲れる美味しい活魚が入手し易かったが、近年、瀬戸内海は、沿岸の各県が環境保全より目先の経済を優先したためか、海砂採取に何ら制限を加える方策を取らなかったため、瀬戸内海は荒れ果ててしまった。
瀬戸内海の海底にある海砂が無くなれは、藻場がなくなり、魚たちの生活環境が破壊されてしまったのだ。採取業者は建設用のコンクリートに混ぜる海砂を根こそぎ採取した。その結果は、漁獲量は激減し、入手しにくくなった活魚を扱う店も少なくなってしまった。
影響は、それだけには止まらなかった。瀬戸内の海砂を混ぜたコンクリートは川砂と違って塩分濃度が高く、コンクリートや鉄筋の劣化が甚だしく、1970年代以降に建てられた建造物は耐震性能が極めて悪く、社会的経済的な問題となった。これは尾道の旧市庁舎の増築部分での問題ともなっていた。
瀬戸内海の海底にある海砂が無くなれは、藻場がなくなり、魚たちの生活環境が破壊されてしまったのだ。採取業者は建設用のコンクリートに混ぜる海砂を根こそぎ採取した。その結果は、漁獲量は激減し、入手しにくくなった活魚を扱う店も少なくなってしまった。
影響は、それだけには止まらなかった。瀬戸内の海砂を混ぜたコンクリートは川砂と違って塩分濃度が高く、コンクリートや鉄筋の劣化が甚だしく、1970年代以降に建てられた建造物は耐震性能が極めて悪く、社会的経済的な問題となった。これは尾道の旧市庁舎の増築部分での問題ともなっていた。
それでも尾道は、まだまだ魚は美味しい
そんな瀬戸内海ではあるが、美味しい魚を提供するお店は、市場を介さず、漁師さんと直接契約で活魚を入手しているようだ。
尾道周辺で捕れた魚たちは、例えば「タイ、メバル、アナゴにアコウ、フグにワタリ(渡り蟹)、キスにイワシ、ゲンチョウにギザミ、ヒラメにコチ...まだまだあるが、これくらいにしておこう。
そんな中で「おこぜ(虎魚)」という魚、これも是非とも味わせてあげたいもの一つだ。天下一品のグロテスクな顔をしている反面、実に繊細な美味しさのある白身の魚だ。一匹丸ごと空揚げにしたり、造りにして残りの頭と骨を空揚げにしてバリバリ食べるのも良い。
それにしても調理は大変だねぇ。背ビレの毒針に刺されぬよう気を配らなければならない。身を少々切られたところで、ヘッチャラの執念深さには吾輩、正直驚いた。底もの(海底に棲む魚)はしぶとい(生命力が強い)のだそうだ。
季節では、春は「しゃこめし」「いいだこ」「鰆のたたき」「桜鯛」、夏は「はも梅肉」「たこ刺」「いわしの洗い」「あこうの洗い」、秋は「たこ天」「小ふぐの唐揚」「白さエビ」、冬は「かき料理」「ふぐ料理」「穴子めし」「まばる」「おこぜ」がおすすめですゾ。ふぐセットは、刺身、ちり、雑炊にヒレ酒…。
以上、知ったかぶりして旬の魚のことを書き綴ったが、浅知恵の吾輩はいつもの耳学問で、書き込んだ殆どのものは『すゑ膳』の主人に教わったものである。ここまで話をしていると、吾輩は美味しい魚が食べたくなってしまった。
小さな尾道町に、ここ1、2年の間に新しい飲食店が二、三十軒もオープンし、まさに世代交代の真っただ中だ。『食のまち』尾道が近い将来誕生しつつあることを実感している。
それにしても、尾道人は昔から味にうるさい。上っ面の修行だけでは、なかなか生き延びていけない町だ。願わくは、新たなお店が尾道市民に愛され定着することを願うばかりだ。(2021年6月3日)
尾道周辺で捕れた魚たちは、例えば「タイ、メバル、アナゴにアコウ、フグにワタリ(渡り蟹)、キスにイワシ、ゲンチョウにギザミ、ヒラメにコチ...まだまだあるが、これくらいにしておこう。
そんな中で「おこぜ(虎魚)」という魚、これも是非とも味わせてあげたいもの一つだ。天下一品のグロテスクな顔をしている反面、実に繊細な美味しさのある白身の魚だ。一匹丸ごと空揚げにしたり、造りにして残りの頭と骨を空揚げにしてバリバリ食べるのも良い。
それにしても調理は大変だねぇ。背ビレの毒針に刺されぬよう気を配らなければならない。身を少々切られたところで、ヘッチャラの執念深さには吾輩、正直驚いた。底もの(海底に棲む魚)はしぶとい(生命力が強い)のだそうだ。
季節では、春は「しゃこめし」「いいだこ」「鰆のたたき」「桜鯛」、夏は「はも梅肉」「たこ刺」「いわしの洗い」「あこうの洗い」、秋は「たこ天」「小ふぐの唐揚」「白さエビ」、冬は「かき料理」「ふぐ料理」「穴子めし」「まばる」「おこぜ」がおすすめですゾ。ふぐセットは、刺身、ちり、雑炊にヒレ酒…。
以上、知ったかぶりして旬の魚のことを書き綴ったが、浅知恵の吾輩はいつもの耳学問で、書き込んだ殆どのものは『すゑ膳』の主人に教わったものである。ここまで話をしていると、吾輩は美味しい魚が食べたくなってしまった。
小さな尾道町に、ここ1、2年の間に新しい飲食店が二、三十軒もオープンし、まさに世代交代の真っただ中だ。『食のまち』尾道が近い将来誕生しつつあることを実感している。
それにしても、尾道人は昔から味にうるさい。上っ面の修行だけでは、なかなか生き延びていけない町だ。願わくは、新たなお店が尾道市民に愛され定着することを願うばかりだ。(2021年6月3日)