凹みの美学ー入門編
凹みというと何だか艶種を期待するお方もいるかも知れぬが、艶は艶でも建物の間にできる空間の艶に吾輩は非常に惹かれ、そのさまざまな凹みを尾道町をさまよいながらご紹介しようと思っている。
中井一正(なかいまさかず)が戦後初の尾道市立図書館長であったことをご存知だろうか。その中井美学と呼ばれる独特の美学理論については、恥ずかしながらまったく存じ上げないが、ある種の美意識については吾輩も非常に興味がある。
最近、尾道町をぶらりぶらりと歩いていると、密集した家屋の中にポツン、ポツンと凹みが目立ってきた。大正、昭和に建てられた後期高齢となった家屋が建て替え時期を迎えたが、新築する元気はなく、手っ取り早く駐車場にして、世の中のお役に立てようというところだろうか。路地裏が故郷の吾輩には、「凹みの増加は路地が絶滅危惧物件となることへの象徴的な前兆だ。」と嘆かわしく思うのだが...。
*中井正一(1900年〜1952年)プロフィール
広島県出身。評論家、国立国会図書館・元副館長。京都学派の流れを汲みつつ、中井美学と呼ばれる独自の美学理論を展開した。その理論は極めて広範多様な対象への実践的な視点で知られる。1936年に発表した代表的論文『委員会の論理』をはじめとして、その著作は戦前戦後を通じて、いわゆる進歩的文化人を中心に広く影響をあたえた。主な著作は「美学入門」「美と集団の論理」など。美学者として、集団の力に注目し、「中井美学」と呼ばれる独自の理論を展開した。映画を軸にした中井のメディア論が、近年、再評価されている。(出典不明)
中井一正(なかいまさかず)が戦後初の尾道市立図書館長であったことをご存知だろうか。その中井美学と呼ばれる独特の美学理論については、恥ずかしながらまったく存じ上げないが、ある種の美意識については吾輩も非常に興味がある。
最近、尾道町をぶらりぶらりと歩いていると、密集した家屋の中にポツン、ポツンと凹みが目立ってきた。大正、昭和に建てられた後期高齢となった家屋が建て替え時期を迎えたが、新築する元気はなく、手っ取り早く駐車場にして、世の中のお役に立てようというところだろうか。路地裏が故郷の吾輩には、「凹みの増加は路地が絶滅危惧物件となることへの象徴的な前兆だ。」と嘆かわしく思うのだが...。
*中井正一(1900年〜1952年)プロフィール
広島県出身。評論家、国立国会図書館・元副館長。京都学派の流れを汲みつつ、中井美学と呼ばれる独自の美学理論を展開した。その理論は極めて広範多様な対象への実践的な視点で知られる。1936年に発表した代表的論文『委員会の論理』をはじめとして、その著作は戦前戦後を通じて、いわゆる進歩的文化人を中心に広く影響をあたえた。主な著作は「美学入門」「美と集団の論理」など。美学者として、集団の力に注目し、「中井美学」と呼ばれる独自の理論を展開した。映画を軸にした中井のメディア論が、近年、再評価されている。(出典不明)
町中の地中海風景
さて、ご紹介したい凹みの第1号は何と言っても上の写真の物件(米場町)だ。この凹みを目にした吾輩は、胸をときめかした。まるで地中海的な風景が目の前に広がる錯覚に陥ったのだ。純白に煌めく壁、対象的にその反対側の黒色の壁、アスファルトの黒、そして垣間見える緑が印象的な凹み。写真と実物の違いを嘆いても仕方ないが、まっ、嘘だと思ったら<天気の良い日曜日か祭日>にお出かけになられてはいかがだろう。それ以外の条件では体験できない凹みなのだ。
*このページは2012年9月に作成したものだが、なぜかカテゴリーの入力をしないまま、未公開となっていることに今、気付いた...。(2017年11月)
*追伸:近頃、ちょっときになる話を吾輩は小耳に挟(はさ)んだ。それは「凹みの美学」というものが、なかなか理解できないという巷の声だ。「凹みの美学」を提唱した吾輩としては、その疑問に答えねばなるまい。
例えば、次のようなことを想像してほしい。尾道の密集地の中に、東西に走る二本の道路に挟まれた土地があったとする。その土地は六つの区画に仕切られて、南側に三区画、北側に三区画、まるで猫の額に仕切られた土地ができたとする。その六区画のそれぞれの敷地に目一杯の大きさで木造家屋を建てると、軒を連ねた町並みができる。時が経ち時代が変わり、その真ん中の家が古くなり空き家となって解体されて、そのまま空き地になったとしたらどうだろう。流行りのドローンで俯瞰すると、町並みに歯抜けのような凹みができる。この凹みからは、いままで見えなかった家の裏側が丸裸となり、衆目に晒されることになる。そのため、ヒトは何とかその晒された凹みの壁面を覆い隠そうとする。しばらくすると、その凹みがそれぞれの施主の美意識と修復コストの加減によって装飾されたり、養生されたりして、ときには思いもよらぬ新たな風景を創造する。これを観察して楽しむことを「凹みの美学」という。お分かりいただけただろうか。(2019年10月)