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歴史都市・尾道が生き延びるには

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東京の「尾道人」の心の支え/CityhallProblem09


東京の「尾道人」の心の支え/CityhallProblem09

尾道市民の皆さんへのメッセージ



私たちにとって心の故郷ともいうべき尾道で、半世紀を越えて親しまれてきた公会堂と市庁舎を取り壊し、新たに巨大な新庁舎を新築するという計画があることを知り、わたしたちは深く悲しんでいます。
尾道で生まれ育ち、あるいは尾道のことをいつも想いながら東京で生きてきた私たちが遠い尾道を想うとき、目に浮かぶのは尾道三山と浄土寺、西国寺、千光寺、多くの神社仏閣と路地や坂道、またそれぞれに思い出のある街角の風景です。そして尾道水道に面して町の中心に建つ近代的な尾道市庁舎と公会堂もまた、そこに欠くことのできない建物です。
尾道には、懐かしく美しい風景の中で人々が触れ合える、豊かな日常の生活が今も存在しています。それこそが私たちがいつまでもこの町に思いを寄せ、忘れることのできない理由でもあります。
こうした風景をこれからも守り育むためには、それぞれの時代の良いもの、美しいものを残し、町の中に歴史を積み重ねていく努力をつづけていかなくてはなりません。比較的新しいからといって、優れた建物を消し去っていけば、歴史は何も残りません。国宝のお寺を守るだけでは、尾道の目指す「歴史都市」をつくることはできないのです。
市庁舎と公会堂については、日本の近代建築として重要だと判断した日本建築学会が、すでに尾道市長に対して保存改修の要望書を提出しています。尾道にとっては、町の戦後を代表する建築として市庁舎・公会堂を生かすことが、この時代を町の記憶として留めるために、どうしてもしなくてはならないことであるはずです。
また、市庁舎・公会堂を解体する理由として、尾道市は防災拠点としての耐震性能が極めて低いことを挙げています。しかし信頼できる専門家の意見では、現在の建築技術で十分な耐震強化ができ、コンクリートの劣化も防げるということです。
東京では昨年来、国立競技場の新築を巡って激しい議論が巻き起こりましたが、ここでも新築か改修かが大きな争点になりました。国は新築を進めていますが、その国自身も、平成25年の閣議決定でこれからは「新しく造ること」から「賢く使うこと」に転換すべきだという方針を示しています。「賢く使う」ことが今求められているのは明らかなのです。
尾道市民のみなさん、どうか公会堂と尾道市庁舎本館を壊さないでください。それを決断できるのは、今尾道にお住いの市民の方々しかありません。  私たち東京の「尾道人」の心の支えであり、誇りである尾道が、これからもさらに魅力ある歴史都市でありつづけてくれることを心から願っています。

かわぐちかいじ(漫画家)
恵谷 治(国際ジャーナリスト)
塚田佳男(音楽家)
藤木竜也(建築史家・千葉工業大学准教授)
藻谷浩介(日本総合研究所調査部主席研究員、地域エコノミスト)
陣内秀信(イタリア都市建築史家・法政大学教授)

2015年4月24日付け山陽日日新聞に掲載された意見広告

第五弾 意見広告
  • 東京の「尾道人」の心の支え/CityhallProblem09

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