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実に聡明で思慮深く奥ゆかしい、そんな彼女のチャーミングな人間性には誰もが好感を抱く

尾道ゆかりの人/yukarinohitobito> イリーナ メジューエワ/IRINAMEJOUEVA

イリーナ メジューエワ/IRINAMEJOUEVA


イリーナ メジューエワ/IRINAMEJOUEVA

ベヒシュタイン・ピアノの縁結び


縁というものは実に不思議なものだ。2013年、吾輩の主人が旧知のフォルテピアノ修復家・山本宣夫さんが主催するスペース・クリストーフォリ堺(大阪府堺市)でのコンサートに参加し、初めてピアニスト上野 真さんを知った。吾が飼い主は、まったく音楽的素養はないが、美しい音色には敏感で、惚れ込むとすぐ動くタイプだ。早速、自ら代表を務めるNPO法人おのみちアート・コミュニケーション(2007-2019)の事業として、同年10月上野 真さんを初めて尾道に招聘した。その折、上野さんにベヒシュタイン・ピアノ(1906年製)があることをお話したことが、翌年2014年3月に吾が飼い主の母校・広島県立尾道東高等学校所有のベヒシュタイン・ピアノ を使用した尾道では第2回目となる上野さんのリサイタルとなった。
その結果、2015年11月には三原ポポロホールの協力を得て、ベヒシュタインを持ち込み、まる4日間、上野真さんの演奏を録音するという新たなNPO活動に発展。このCD録音に携わったのが、レコーディング ディレクターの明比幸生さんとスタインウェイ ジャパンの技術者で調律師の松本安生さんだった。上野真CD「夜のガスパール」は2016年7月「レコード芸術」特選版に選ばれた。

ピアニスト・イリーナ メジューエワとの出会い


レコーディングを終え、しばらくして明比さんから電話がかかった。「尾道が気に入ったので妻を連れて遊びに行ってもいいですか」と。吾輩の飼い主は「是非ともお越しください。」と大喜び。2016年の手帳をみると1月31日11時11分着の電車でご夫妻を在来線の尾道駅に迎えている。吾が主人は、他人のプライバシーにほとんど立入らないので、どんな人が奥様か、まったく知らず迎えたわけだ。そのため、お迎えした奥様が外国の方だったので一瞬戸惑ったと言っていた。明比さんの奥さんがイリーナメジューエワという有名なピアニストであることを理解したのは、その数日後だったというから、吾輩の主人らしいなぁと納得する次第だ。

イリーナ メジューエワ演奏会


2016年9月に尾道市瀬戸田町のベル・カントホールで、ベーゼンドルファー・ピアノを使用した彼女のリサイタルは実現した。その後、NPO法人を自らの手で解散したので、彼女のコンサートを主催する機会を失ってしまった。それでもイリーナ メジューエワの演奏を尾道でふたたび聴きたいという気持ちは、心の奥底に大切に仕舞っておいた。たまたま吾輩の主人は、尾道東高校の同窓会「浦曙会」の役員だったので、2019年11月に県立尾道東高等学校創立110周年記念事業として、彼女の記念演奏会を実現できたことは大変嬉しかったようだ。

110周年事業前日は、大混乱の中でのリハーサル


それにしても、記念式典前日、吾輩たちが予期もしなかった生徒たちの様々な持ち場での入り乱れるリハーサルで体育館内は騒然たる大混乱。その悪条件下、イリーナさんのリハーサルをお願いせざるを得なかった。しかしながら、彼女はどんな不平も言わず、淡々と自らのリハーサルをこなした。吾輩たちは、肝を冷やしながらも、彼女の卓越した集中力と自制力には脱帽するほかなかった。
記念式典前日、学校内の体育館に魚沼市小出郷文化会館の初代館長の桜井俊幸さんに制作依頼した移動式の特殊反響板をステージに組み立てた。この反響板はやはり役立ったようで、イリーナ メジューエワの演奏は、全校生徒と来賓、PTAなど7〜800名あまりの観衆を魅了した。余談ではあるが、この反響板は、2011年に吾輩の主人がNPO活動の一環として、友人Yの協力を得てある団体の記念事業としてご出宝いただき、尾道市に寄付したものだが、残念ながら殆ど使用されていない。

まちづくりの醍醐味


創立110周年記念演奏会が終わり、会場を出ると多くの生徒たちが並んでイリーナ メジューエワを見送ってくれた。そして感動的だったのは、と吾が飼い主が吾輩に語るのだ。
「感動的だったのは、後部座席に明比さんとイリーナ メジューエワを乗せた車を吾輩がゆっくりと動かし始めたその時、彼女のガラス窓越しに数名の女子生徒が駆け寄ってきて、その中の一人が真剣は顔をして声をかけた。『私はイリーナさんのようなピアニストになりたいです!』
車を運転する吾輩の飼い主は、自主的に整列し、イリーナさんを見送る多くの生徒たちの笑顔も実によかったと言っていた。ホンモノに出会い、感動する、これぞまちづくりの醍醐味である。以後、ありがたいことに何度もご夫妻は尾道にお寄りくださっている。イリーナ メジューエワは、音楽家としての魅力は当然なことながら、彼女に合い、言葉を交わすだけで、聡明で思慮深く、奥ゆかしい彼女のチャーミングな人間性に吾輩(路地ニャン公のその飼い主)共々、虜になっている。勿論、ご主人の明比さんも、能ある鷹は爪を隠すタイプで、気さくな人柄に吾輩たちは大いに好感をもっている。
それにしても「縁は異なもの味なもの」で、まさしく尾道は出会いの装置だと実感している。(2020年8月3日)
*残念ながらイリーナさんのこれはと思える写真を殆ど撮っていなくて申し訳ない。いい写真が手に入ったら、差し替えますので、今のところはご勘弁をお願いしたい。

イリーナ メジューエワ(IRINA MEJOUEVA) プロフィール


ロシアのゴーリキー(現ニジニー・ノヴゴロド)生まれ。5歳よりピアノを始め、モスクワ のグネーシン特別音楽学校とグネーシン音楽大学(現ロシア音楽アカデミー)でウラジーミ ル・トロップ教授に師事。1992 年ロッテルダム(オランダ)で開催された第 4 回エドゥアル ド・フリプセ国際コンクールでの優勝後、オランダ、ドイツ、フランスなどで 公演を行う。
1997 年からは日本を本拠地として活動。 2002 年、スタインウェイ・ジャパンによる国内コンサートツアー。2003 年、 サンクトペテルブルク放送交響楽団と日本国内4都市で共演したほか、2005〜06 年には ザ・シンフォニーホール(大阪)で4回にわたるリサイタル・シリーズに出演。2006 年からは毎年京都でリサイタルを開催している。日本デビュー20周年を迎えた2017/18年のシーズンには、東京文化会館・小ホールでシリーズ演奏会(全3回)に出演するなど、精力的な演奏活動を展開。また台湾(2012年)、中国(2018年、2019年)など、アジア諸国でも演奏活動の場を広げている。
これまでにロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団、プラハ交響楽団、ロシア・シンフォニー オーケストラ、高雄市交響楽団(台湾)、日本フィルハーモニー交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団、東京交響楽団、東京都交響楽団、読売日本交響楽団、オーケストラAfiA、神奈川フィルハーモニー管弦楽団、セントラル愛知交響楽団、京都市交響楽団 、日本 センチュリー交響楽団、大阪交響楽団、兵庫芸術文化センター管弦楽団、 テレマン室内管弦楽団、九州交響楽団、広島交響楽団、山形交響楽団などと共演。
CD録音にも積極的で、これまでに多数のアルバムをリリース。「ショパン:ノクターン全集」(若林工房:WAKA-4143〜 44)は、 2010 年度レコードアカデミー賞 (器楽曲部門)に輝く。2006 年度青山音楽賞受賞。2015年、第 27 回ミュージック・ペンクラブ音楽 賞(クラシック部門、独奏・独唱部門)受賞。2017年には初の著書「ピアノの名曲 聴きどころ 弾きどころ」が講談社現代新書より刊行された。
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