串カツ「一口」の創業者・山本明次さん87歳で逝く
米場町通りを東へ向かうと突き当たりの三叉路に『一口』という大きな看板が見える。ここが串カツ「一口」の尾道の出発点だ。この旧店舗では、夕刻5時の開店前の20〜30分には、もう客たちが行列をつくっていた。
暖簾をくぐると、「いらっしゃい!」と威勢のよい掛け声がお客を迎える。狭い店内で、お客は店主・山本明次さんの一挙手一投足をみつめる。煮え立つ油すれすれにまで串を運ぶ指、跳ね上がる油にも動ぜず、客との談笑の合間にも耳だけは、油の微妙な音の変化を聞き逃さない。さすが、プロだね!
山本明次さんが大阪から尾道に移り住み、この店を始めたのが1964(昭和39)年というから半世紀は過ぎている。もともと寿司職人だけに、仕入れや仕込みに力が入る。吟味した瀬戸内の魚介類20品目を店主がお客の目の前で、パリッと揚げる。お客は、12~3人くらいしか入れぬ狭い店内で、生ビ−ルや冷酒を呑み、キャベツをバリバリ食べながら熱々の串カツを今か今かと待ちわびる。その合間、新たなお客が増えるたびに丸椅子をもって大移動。店主「すんませんなぁ」、新たなお客「すいませんねぇ」、お隣さん「いやいや、どうも」。いつしか気心が知れてしまうという不思議な店だった。
カラっと揚がった串カツが皿に載せられお客の前に置かれると、その食べ方をご主人が伝授され、お客は素直に従って食べ始める。
この小さな狭い旧店舗の串カツ「一口」は、尾道ではピカイチの五感で味わえる、かけがえのないお店だった。
北海道⇄尾道でトンチンカンなやりとり
2022年6月30日、突然、吾輩の主人が大変お世話になっていたお店のご主人が亡くなったという訃報のメールが、知らないアドレスから入ってきた。なんでも「遠くのお店で、Oさん(吾輩の飼い主)が居なかったら知ることがなかったお店で、Oさんのお陰で多くの知り合いを作ってくれたお店でした。懐かしくてメールしました。」という内容。この人は誰だろうか。
翌日、どうしたもんかと悩んだ末に、吾輩の主人は知らないメールの送り主に次のようなメールを送った。
「ご連絡ありがとうございます、なんですが、お名前が書かれていません。お名前を教えていただけますか?一口のご主人がお亡くなりなったというお話には、驚いています。吾輩が新店舗の「一口」に顔を出し、ご主人がいつものように頑張っておられるのを動画に撮り、路地ニャンのWEBSITEに載せたのが、コロナ前ですか。以降、夜に出る機会がめっきりなくなって、住んでいる尾道の情報が吾輩にバッタリ入らなくなりました。」
その日の内に知らぬアドレスの送り主から吾輩の主人に返信がありました。
「こんにちは。お名前は、山本明次さんだそうです。先月24日に亡くなられたと。今年の1月までお店で現役だったようで、87歳です。そちらは暑いようですが、体調に気をつけてくださいね。」
翌日、どうしたもんかと悩んだ末に、吾輩の主人は知らないメールの送り主に次のようなメールを送った。
「ご連絡ありがとうございます、なんですが、お名前が書かれていません。お名前を教えていただけますか?一口のご主人がお亡くなりなったというお話には、驚いています。吾輩が新店舗の「一口」に顔を出し、ご主人がいつものように頑張っておられるのを動画に撮り、路地ニャンのWEBSITEに載せたのが、コロナ前ですか。以降、夜に出る機会がめっきりなくなって、住んでいる尾道の情報が吾輩にバッタリ入らなくなりました。」
その日の内に知らぬアドレスの送り主から吾輩の主人に返信がありました。
「こんにちは。お名前は、山本明次さんだそうです。先月24日に亡くなられたと。今年の1月までお店で現役だったようで、87歳です。そちらは暑いようですが、体調に気をつけてくださいね。」
一文字違いで行方が判らぬデジタル社会
「何とも気遣いのできるお方だな。それにしてもどなたなのか?」と、吾輩の主人は独り言。再び、吾輩の主人は、送り主がわからぬアドレスにメールを送った。
曰く、「すみません。私の文章がまずかったようです。一口の山本さんはよく存知上げております。お亡くなりになられた日を教えていただき、有難うございます。それで、私が知りたいのは、貴方さまのお名前です。メールが送られてきたCat…...という発信アドのアナタ様のお名前を教えていただけませんか。」
名前の判らぬ送り主から「わかりました。北海道のKです。失礼しました。」
今から思うと、トンチンカンなメールのやりとりとなった。この原因は、実に吾輩の飼い主の凡ミスにあった。吾輩の主人がKさんのアドレスを愛用のiphoneに「b」を一文字多く登録したためだった。
それにしても、「一口」のご主人の訃報を、尾道に住んでる住民はまったく知らず、いち早く、遠くの北海道のKさんに届くとは、便利なデジタル社会だと吾輩・路地ニャン公も感心したが、たった一文字でトンチンカンとは不便なデジタル社会だとも実感した。
曰く、「すみません。私の文章がまずかったようです。一口の山本さんはよく存知上げております。お亡くなりになられた日を教えていただき、有難うございます。それで、私が知りたいのは、貴方さまのお名前です。メールが送られてきたCat…...という発信アドのアナタ様のお名前を教えていただけませんか。」
名前の判らぬ送り主から「わかりました。北海道のKです。失礼しました。」
今から思うと、トンチンカンなメールのやりとりとなった。この原因は、実に吾輩の飼い主の凡ミスにあった。吾輩の主人がKさんのアドレスを愛用のiphoneに「b」を一文字多く登録したためだった。
それにしても、「一口」のご主人の訃報を、尾道に住んでる住民はまったく知らず、いち早く、遠くの北海道のKさんに届くとは、便利なデジタル社会だと吾輩・路地ニャン公も感心したが、たった一文字でトンチンカンとは不便なデジタル社会だとも実感した。
「すんませんなぁ」と店主の声で一斉に大移動
吾輩の主人が猫である吾輩に向かって、ため息ながら呟いた。『秀吉(木下藤吉郎)の一夜城よろしく、尾道は日毎に日常の風景がドンドン変わって行くという、まるで都会化する田舎だ。味はともかく、若者向きのインスタ映えの新飲食店舗がアッという間にいっぱいできて、別世界の尾道のようでサッパリわからぬ。』
『変わらぬ味は、新店舗の串カツ「一口」か。創業者の山本明次さん直々の伝授で、ご子息二代目と三代目のお孫さん山本ご一家が頑張っている。
「すんませんなぁ」の山本明次さんの一声で、お客の分け隔てなく自分で木製の丸椅子をもって移動開始。新たなお客「すいませんねぇ」お隣さん「いやいや、どうも。ところでお宅はどちらから?」そんな会話の記憶が蘇り、懐かしいなぁ。』と。
『変わらぬ味は、新店舗の串カツ「一口」か。創業者の山本明次さん直々の伝授で、ご子息二代目と三代目のお孫さん山本ご一家が頑張っている。
「すんませんなぁ」の山本明次さんの一声で、お客の分け隔てなく自分で木製の丸椅子をもって移動開始。新たなお客「すいませんねぇ」お隣さん「いやいや、どうも。ところでお宅はどちらから?」そんな会話の記憶が蘇り、懐かしいなぁ。』と。
(2022年7月15日)